ハリネズミのやさしさ

読み切り短編小説 大事な心を書き留めます。

欠点は美点にもなる

オレは色鉛筆の白だ。

他のどの色よりも背が高い。

いつもハナちゃんは赤い色鉛筆でチューリップを描く。だから、赤は背が低い。

「白さんは背が高くていいね。」

赤によく言われるが、オレは赤の方が羨ましい。

他の色たちもオレを羨むくせに、ハナちゃんに使われる時は嬉しそうにする。

背が低ければ低いほど、ハナちゃんに必要とされていることの表れなんだ。

 

ハナちゃんが歌い出した。

「さいたー さいたー チューリップのーはながー なーらんだー なーらんだー あかー しろー きいろー・・・あれっ?」

突然歌が止まり、白が掴まれた。

白はびっくりして、体が硬くなった。

「白いチューリップもあるんだあー」

そう言いながら、ハナちゃんは白でチューリップを描き始めた。

白は使われる嬉しさを実感した。

オレの白はすっごく綺麗だろう?

胸を張った。

だけど、使われたのはその時だけだった。

白い紙に白を塗っても、何も変わらないとハナちゃんは気づいてしまったのだ。

 

ついに、赤とさよならをしなければいけない日が来た。寿命だ。

ハナちゃんはギリギリまで使ってくれた。

もう持てないくらい短い。

「赤さんありがとう」

ハナちゃんは言った。

 

しばらくすると、新しい赤が来た。

でも、それもすぐにいなくなるのだろう。

その瞬間、オレは自分が幸せであると思った。

ハナちゃんと一番長く一緒にいられるのは、オレなんだ!!

ハナちゃんに必要とされなくてもいい。

背が高いままでいい。

オレがハナちゃんの成長を見届けよう。

ハナちゃんに使われていく色が羨ましい気持ちは消えなかったが、白はそれでいいと思った。

オレにはオレにしか出来ない事があるんだ。

 

それから白は、背が高い事を自慢するようになった。