ハリネズミのやさしさ

読み切り短編小説 大事な心を書き留めます。

無愛想くんは無愛想じゃない

素直になれない無愛想くん。 ありがとう すら言えなくて 近づいてくるやつは、いやしない。 ただ気恥ずかしいだけなのに。 それに気づいてくれる人は誰もいない。 道を歩いていると 花を咥えた猫が無愛想くんの前に表れた。 思わず立ち止まった無愛想くんの…

欠点は美点にもなる

オレは色鉛筆の白だ。 他のどの色よりも背が高い。 いつもハナちゃんは赤い色鉛筆でチューリップを描く。だから、赤は背が低い。 「白さんは背が高くていいね。」 赤によく言われるが、オレは赤の方が羨ましい。 他の色たちもオレを羨むくせに、ハナちゃんに…

人の愛のかたち

少年は電車に乗った。でも行き先は決まっていない。八つ当たりだ。 母親は毎日仕事で忙しく、ごはんは作り置き、顔を合わせることはほとんどない。家にいても、どうせひとりぼっちだから、どこかへ行こうと思った。 少年は母親に嫌われているのかと思い始め…

始める勇気

種は最初の一歩に躊躇っている。 これから何が起こるのか。 見えない未来が恐ろしくて、真っ白な世界に絵の具をたらす勇気がない。 芽を出してしまえば、枯れる時が来る。 だったら、このままじっとしていればいい。 静かに死を待ち続ければいい。 そう思っ…